SPECIALISTの声

犬との水遊びや水中運動の効果と注意点(ドッグトレーナー河田依里)

2021年09月01日

普段はドッグトレーナーとして、愛犬との接し方を優しく指導している河田さんが、愛犬との水遊びについて詳しく教えてくれました。水中だからこそ期待される効果や、気を付けなければならない注意点もあり貴重なアドバイスをたくさん頂けました。最近では愛犬とアウトドアへ出かける方も増えていると思いますので、ぜひ愛犬との遊び方のご参考にも。

河田依里氏
-Wiz.dog Club所属ドッグトレーナー
-カインズ広島LECT店担当
-動物看護師
Web Site:https://wiz-dog.com/

水遊びをやってみたい!

「暑い夏には、愛犬と一緒に水遊びをやってみたい!」という方は少なくないと思います。最近では、夏場限定で簡易プールを設置しているドッグランが増えてきました。また、インターネットで検索すると、「ドッグプール」等の名前で、犬の爪が当たっても破れにくい素材のプールが売られています。川や海で愛犬を泳がせてみたい方もいるでしょう。
しかし、犬を水に入れて遊ばせるのには、地上の運動とは違った素晴らしい効果が沢山ある反面、怪我や病気を悪化させるリスクも潜んでいます。正しい知識を身に着けることは、安全に身体を鍛える運動に繋がります。

水中運動ってどんなもの?

シャワーや水鉄砲を使った犬との「水遊び」も楽しいですが、犬の足や身体が浸かる水位での「水中運動」に挑戦するのも良いですね。水中運動には2種類あり、水底に足が着いた状態で歩かせる「水中歩行」と、足が着かない水位で泳がせる「スイミング」があります。

水の特性・効果的な水中運動

水には様々な特性があります。浮力は身体を重力から解放し、関節への負担を和らげます。水圧はむくみを軽減させたり、心肺機能を強化したりします。水の抵抗は身体を支え倒れるのを防ぐとともに筋力強化にもなります。表面張力は屈筋(関節を曲げる筋肉)の筋力強化に役立ちます。地上運動に比べて水中運動は、関節には大きな力がかからないのに筋肉や肺には大きな力がかかる運動というわけです。若齢犬の全身運動にはもちろんのこと、肥満犬のダイエットや高齢犬の寝たきり予防にも効果的と言えます。
これらの水の特性を生かして、水中運動は四肢に麻痺がある犬の神経機能の改善や、整形外科疾患手術後の犬の筋力強化のリハビリにも使われています。浮力や抵抗が身体を支えることで、麻痺がある犬でも立った状態を保ちながらエクササイズが出来るのです。上手く歩けない犬や自力で立てない犬が、もう一度自分の足で歩けることを自覚するのは、それだけで犬の大きな喜びになります。リハビリは水中運動に限ったものではありませんが、人よりもずっと短い犬生の中で1日でも長く、歩ける状態を保つことは、犬のQOLを高めることに繋がるでしょう。

注意点を知っておこう

良い効果ばかりに思える水中運動ですが、注意点もあります。海や川などの自然の中でのフリースイミングでは、釣り針やガラスの破片で怪我をしないよう注意が必要です。また、犬がパニックになったり水に流されたりすることも考えられるので、必ずリードをつけておきましょう。泳ぐのに慣れていない犬は、ライフジャケットを付けてあげると安心です。暑い日には、熱中症にも注意が必要です。逆に、冷たい水の中に長時間居続けると低体温症の危険もあります。こまめに日陰で休憩を取らせ、濡れた後はタオルでしっかり水気を切ってよく乾かしましょう。

それから、波や流れが無いプールであっても、気を付けないといけないのは犬の体調です。胸が水に浸かる水位でのスイミングや水中歩行では、呼吸が制限されます。顔を浸けて泳ぐ人間と違って、犬の鼻は水面から出ているのにどうして?と不思議に思いますよね。

肋骨で囲われた、肺が収まっているスペースを「胸郭」と言います。胸郭を広げることで肺が膨らみ空気が入ってきます。この胸郭を広げるためには、犬の場合、肋骨を前に動かす必要があります。肋骨は肋軟骨を通して胸骨と繋がっているため、横に広げることは出来ないのです。ところが、水中では水圧に加えて、前から水の抵抗も受けますので、肋骨を前に動かすことが、地上に比べて難しくなります。だから、犬の鼻や口が水面から出ていても、胸が浸かっている時点で呼吸器には負担がかかっているのです。これが健康な犬であれば心肺機能を高めることに繋がるわけですが、呼吸器や心臓などの循環器に問題がある犬は、大きな負荷がかかる水中運動をさせてはいけません。愛犬が咳をしているなど、「いつもとちょっと違うかな?」という時には、水に入れるのは中止してください。

また、水中運動がいくらリハビリに使われているといっても、素人判断で行うのは大変危険です。例えば、小型犬に多い膝蓋骨脱臼という病気がありますが、もし、患部である膝が水面から出るほどの浅い水位で運動させた場合、膝には地上運動よりも更に負担がかかります。水の抵抗や表面張力が足の動きを邪魔するからです。弱っている部分に負荷をかけ過ぎることは病気や怪我を悪化させるリスクがあるので、疾患を持っている犬は、獣医さんとよく相談してから水中運動を行ってください。

知は力なり

同じ水中運動をさせるのにも、正しい知識があれば、「やめておけばよかった」「もっと○○させておけばよかった」といった後悔を防ぐことが出来ますし、知識を活用してお散歩などの地上運動と合わせて水中運動で身体を鍛えることができます。愛犬と一緒に、暑い夏を楽しんでくださいね!

編集後記—

河田さんは広島でドッグトレーナーとして愛犬との接し方をご指導されていますが、動物看護師としての資格もあり愛犬の健康について研究を重ねています。愛犬とオーナーさんが一緒に喜んで遊び、健康になれる、そんな遊び方を改めて考える良い機会になれば嬉しいです。イージードッグは、これからも河田さんのようなドッグトレーナーさんを応援します!

寄稿:Wiz.dog Club(ウィジードッグクラブ)
河田依里氏

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