SPECIALISTの声

獣医さんに教えてもらう「改めて知る、散歩の大切さ」/【第1回】散歩は“歩くこと”ではありません

2026年01月16日

臨床歴35年というベテラン獣医師であり、大学で学生に指導をされることもある小沼先生に愛犬の散歩について伺いました。
「散歩は“運動”だけではありません。犬の身体・心・そして人との関係を整える時間であり、その先に予防医療につながる大切な時間です」と、改めて散歩の大切さを教えて頂きました。
愛犬との大切な時間である散歩について、獣医師さんの視点から全4回にわたり解説してもらいます。



小沼守 獣医師・獣医学博士
-千葉大学特担教授
-大相模動物クリニック名誉院長
-どうぶつ健康科学研究所所長
-日本獣医腎泌尿器学会(認定医)
-日本サプリメント協会(ペット栄養部会長)
-日本ペット栄養学会(動物用サプリメント研究推進委員)
-日本国際動物救命救急協会(アドバイザー)
-獣医アトピー・アレルギー・免疫学会(編集委員)その他、所属団体多数

 

散歩は“歩くこと”ではありません


~ 35年の臨床で私が見てきたもの~
犬と暮らす私たちが、毎日できるいちばんの愛情



「散歩に行こうか」そう声をかけると、嬉しそうに尻尾を振る犬。
多くのご家庭で見られる、何気ない日常の一場面です。
散歩というと、「運動のため」「トイレのため」と思われがちですが、35年間、臨床獣医師として犬たちと向き合ってきた私にとって、散歩はそれ以上の意味を持っていると思っています。

散歩は、犬にとって身体を整え、心を落ち着かせ、人との信頼関係を育てる時間。
そして飼い主にとっては、犬の小さな変化に気づける、かけがえのない時間なのです。

散歩は「適正飼養という正しい飼い方」の中心にあるもの



出典元:「飼う前も、飼ってからも考えよう(環境省)

日本には動物愛護管理法という法律があり、犬を飼う人には正しい飼い方として「適正飼養」が求められています。
適正飼養とは、「きちんと餌をあげている」「ワクチンなどの必要な健康管理をしている」。

それだけではありません。
犬という動物が本来持っている「歩きたい」「匂いを嗅ぎたい」「外の世界を感じたい」という気持ちを大切にすることも、適正飼養の一部です。

散歩は、その気持ちを満たす、最も身近で、毎日できる方法なのです。

「5つの自由」と、いつもの散歩



出典元:「飼う前も、飼ってからも考えよう(環境省)」2ページ

動物福祉の考え方に「5つの自由」というものがあります。
その中のひとつに、「本来の行動を表現する自由」があります。

犬にとっての本来の行動とは、ただ前に進むことではありません。
立ち止まって匂いを嗅いだり、少し遠回りをしたり、他の犬のにおいなど気になるものを確認したり――。そうした行動ができる散歩は、犬の心をとても安定させます。

気づかないうちに、犬が我慢していること




飼い主さんに悪気はなくても、「常に引っ張られている」「止まることが許されない」「怖がっているのに進まされる」そんな散歩が続くと、犬は少しずつストレスをためていきます。

「動物虐待」という言葉は、とても強く聞こえるかもしれませんが、実は「叩く」「ケガさせる」だけが「動物虐待」ではありません。

ストレスとは少なからずつながりがあり、例えば犬の気持ちに気づかないまま、我慢を重ねさせてしまうこと。
それもまた、「動物虐待」として食事を与えないなどで使われる「ネグレクト」につながることもあるので注意が必要です。

散歩は「管理」ではなく「対話」


散歩は、犬を思い通りに動かす時間ではありません。犬と「会話」をする時間です。

「ここが気になるんだね」「今日は少し怖かったね」。そんなふうに犬の行動を受け止めることで、犬は「この人と一緒なら安心できる」と感じるようになります。
この安心感は、問題行動の予防にもつながり、結果として、飼い主さん自身の散歩も楽なものになります。



このコラムでは、「散歩って、こんなに奥が深かったんだ」そう感じてもらえるようなお話を、4回に分けてお届けします。ただし散歩は義務ではありません。
犬と暮らすと決めた私たちが、毎日できる、いちばん身近な愛情表現なのです。

次回は、「犬の身体は散歩の質で変わる」をテーマに、臨床獣医師の視点からお話しします。

寄稿:小沼守氏 獣医師・博士(獣医学)

編集後記—

小沼先生には普段より色々と教えて頂いていて、新しい製品の開発を監修されたり、イベントで動物の健康に関するセミナーの講師もしています。
健康に大切と分かっている散歩も、獣医師の視点からみると、わたしたちの知らないポイントがたくさんあり、更に散歩が大切に、また楽しくなりそうです。
次回のお話も、楽しみですね。

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