獣医師としてクリニックで動物の診療にあたることもあれば、大学で学生に指導をされることもある小沼先生に、能登半島を訪れた際に直接見てきた現地の様子や動物たちの状況をレポートして頂きました。
2024年1月の地震発生で大きな被害を受けた現地には、いまだに地震の爪痕がはっきりと残っており、復興の最中であることが分かります。
小沼守 獣医師・獣医学博士
-千葉大学特担教授
-大相模動物クリニック名誉院長
-どうぶつ健康科学研究所所長
-日本獣医腎泌尿器学会(認定医)
-日本サプリメント協会(ペット栄養部会長)
-日本ペット栄養学会(動物用サプリメント研究推進委員)
-日本国際動物救命救急協会(アドバイザー)
-獣医アトピー・アレルギー・免疫学会(編集委員)その他、所属団体多数
能登半島地震支援レポート
2024年1月1日に石川県奥能登でM7.6、最大震度7の地震が発生した「令和6年能登半島地震」の7カ月経過した時点での動物支援について、3か所の施設の現状を交え報告します。
8月10日(金)、能登半島地震で保護された犬猫を飼養管理している保護シェルターのある国際ビジネス学院「しっぽの郷」内の動物保護施設「CoCoRo」を、見学させていただきました(図2, 3)。
ここでの調査内容としては、支援物資としてペットシーツは豊富であったが、地域柄、猫中心である事情もあり、猫砂が不足していました(図4)。
支援から帰宅後、新東亜交易株式会社様へ猫砂の提供を依頼し、支援していただきました(図5)。
このように支援はただ送ればよいというものではなく、需要と供給が大切であることを痛感した経験でした。
▲図2. 動物保護施設CoCoRo
▲図3. 保護されている猫
▲図4. 支援物資
▲図5. 追加支援の猫砂
8月11日(土)、12日(日)の2日間、私も支援している動物看護師の団体「動物支援ナース」の西村裕子先生らと共に、被災地を巡回しました。
7月の活動で、ペットを飼っていない住民より、猫が外を歩いている姿をよく見かけるので「ノミ」が心配というお声を頂きましたので、今回は「ノミダニ予防」に重点に支援を実施しました。
避難所までの移動で、まず驚きだったのは、7カ月も経過しているのに目の当たりした珠洲市の光景でした(図6)。
あまりにも衝撃的で言葉を失いましたが、支援継続の必要性と、災害の記憶を風化させないために、私たち一人ひとりができることを考え、行動していく必要性をひしひしと感じられました。
▲図6. 珠洲市の現状
1ケ所目の避難所は、珠洲市生涯学習センター横のピースワンコ様の仮設保護施設のあったペット同伴避難所の飯田公民館に伺いました。
避難者はほぼ仮設に移動され、犬2頭と猫1頭、2家族だけとなっておりました(図7)。
ピースワンコ様の一時保護施設も撤退されており復旧が進んだと感じられました(図8)。
▲図7.避難している犬
▲図8. ピースわんこ様の撤退案内
2か所目は多くの仮設住宅のある鵜川応急仮設住宅に伺いました。
まずは集会場で、集まっていただいた猫に、ノミダニ薬の投与はもちろん、複数の猫を診察させていただきました(図9, 10)。
続いて集会場に連れてこられない飼い主様のために応急仮設住宅を訪問しました。
寒冷地のため2重ドアになっているところが逆にペットの逸走防止になっている。猫のいることがわかるシールもありました(図11)。
応急仮設住宅内では、最低限の診察しかできませんが、飼い主様にできるだけ安心していただくよう寄り添う医療を提供させていただきました(図12)。
▲図9. 公民館で診察前のお話を伺う様子
▲図10. 猫の触診の様子
▲図11. 2重ドアのため逃走防止になっている&猫のいることを示すシールあり
▲図12. 応急仮設住宅の訪問の様子
震災から半年は過ぎたこの時期は、現在の生活に落ち着き、ひととの関わりの中で回復していく時期ともいえます。
ひとりにならないことやひとりにさせないこと、それが日々の暮らしの支えになるのです。
今回は、ペット支援で入っておりますが、ペットを診るきっかけで、お家に招き入れてくださることが多かったです。
ペットとの暮らしをみせて頂くことは、そのペットを支える飼い主様の健康を見守ることにも繋がりました。
最後に、今後は、災害の記憶を風化させず、支援を継続していくことこそが支援の在り方だと感じられました。
皆様方もぜひ災害の記憶を風化せず、自分事として考え、災害対策をしていただきたいです。
寄稿:小沼守氏 獣医師・博士(獣医学)
*2024年8月時点のレポート
—編集後記—
小沼先生には普段より様々な疑問に答えてもらっていて、イベントで動物の健康に関するセミナーの講師をして頂いたこともあります。
そんな先生が間近で見てきた能登半島の様子は、とても説得力があり考えさせられますよね。
わたしたちも自然災害への備えを心掛けるとともに、支援について考えてみるきっかけになるかもしれません。